大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)1824号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(爭点)被告人はいわゆる赤線区域で、「カフエー○○」の屋号でカフエー業、(特殊飮食店)を経営していたものであるが、A女と共謀してX女を女給と雇い入れ同女に淫行をさせたと認定し児童福祉法第六〇条第一項を適用した原判決に対し、論旨(判旨に関係する部分)は、被告人とX女の間に女給雇入の雇傭関係は法律上成立しないことを前提として原判決の認定を争いA女が雇い入れの際氏名を詐称し年令を偽つたことにより被告人に犯意なしといつている。

(判旨)俗にいわゆる赤線区域に存する特殊飮食店で稼働する婦女は、その実、主として売淫に従事するものなるに拘らず表面上は、一般雇傭契約に基づき単なる女給としての仕事に従事するものとしての取扱を受けている実情にあるのみならず、被告人経営の「カフエー○○」もいわゆる赤線区域の特殊飮食店とはいいながら、その名の示す如く飮食店である以上、これに従事する婦女が、飮食提供の給仕婦としての仕事に従事することのあるべきことは当然であり、ただ、同店が、特殊飮食店として婦女をして売淫に従事させることを主たる業務としている関係上、その婦女に対して支払うべき報酬中には、その女給としての労務報酬の外売淫によつて得た収益の一部が含まれているにすぎないのであつて、X女との契約も、その軌を出でず、その報酬勘定も月三回払とし、同女の労務によつて得た利益のうちの四割を同女に支払う約束であつたことが証拠上明白であることに照らし、原判決が、X女を「女給として雇い入れた」旨判示したからといつて何等非議さるべきものはない。なおX女が○日雇い入れられる際、すでに成年に達している実姉Y女の名を偽り称したのを被告人等においてそのまま軽信し、その後同女が○日検診された際、その偽名の事実が暴露され、実は十八年未満の少年であることが判明するに至つたことは洵に所論のとおりであるが、児童福祉法第六〇条第三項には、児童を使用する者において、過失のない限り、児童の年令を知らないことを理由として児童に淫行をさせた所為につき同条第一項所定の処罰を免かれない旨を定めており、被告人等は、右検診の折まで、現実にX女の戸籍謄本について見る等同女の年令を確認するにつき、予かじめ適切な調査を遂げた事跡なく、ただ漫然と同女の詐言を信じて同女を淫行に従事させたことが証拠上明らかであるから、被告人等は、少くとも同女を十八年以上の成年と信じたるについて当然なすべき注意義務を怠りたるによる過失の責を免かれない。されば、原審が、被告人等の所為につき、児童福祉法第六〇条第一項の罪に問擬したことは正当である。従つて、被告人はX女に偽罔せられたのであるから犯罪の意思なく、少くとも雇い入れから検診前日迄の所為については無罪とせられるべきに拘らず、原審が敢てこれが所為についても有罪としたことは、畢竟ずるに、児童福祉法の解釈を誤まり、或いは、審理不尽の過誤を冒したものであるとする所論もまたその理由がない。

(説明)この種事件で雇われる児童が十八年以上の者と詐称することが多いのであるがさればこそ児童福祉法第六〇条第三項を設けかような場合にも雇主をしてこれに調査義務を負わし雇主が欺罔されたという抗弁を拒否している。この点に関する先例として二八、七、一四第十一刑事部判決(二八(う)第一、四九八号兒童福祉法違反被告事件)がある。

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